ドゥマゲテで、生まれてすぐに捨てられた赤ちゃんが市民病院に運ばれたというニュースを知った瞬間、私は居ても立ってもいられなくなりました。

すぐに家にあった新生児用の衣類や哺乳瓶、ベビーバス、オムツ等をかき集め、「少しでも役に立てれば」という思いで病院へ向かうことにしました。
その際、ボランティア活動に関心を持っていた小学4年生のひなたを誘いました。彼にもフィリピンの現実を知ってほしい、そして何かを感じ取ってほしいという願いを込めて。

病院に到着すると、私たちの目に飛び込んできたのは、外で点滴を受ける患者たちの姿でした。治療を受けるには現金が必要で、お金がない人々は十分な治療を受けられない——その現実に、ひなたも驚きを隠せませんでした。

しかし、私たちの目的は赤ちゃんに会うこと。ひなたはまっすぐ前を向き続けました。病院で赤ちゃんの行方を尋ねると、すでに児童福祉施設に引き取られた後でした。個人情報の関係で居場所は明かされません。けれど、ひなたは「会いたい」という気持ちを諦めませんでした。

翌日、私たちは学校を休んで児童福祉事務所へ向かいました。これまでのボランティア活動のこと、赤ちゃんに会いたい一心で来たことを、必死に伝えました。私たちの真剣な思いは大人たちの心にも届き、ついに「赤ちゃんに会える」との連絡が入りました。

翌日、施設に到着したその瞬間…
ひなたはついに赤ちゃんと対面しました。けれど、その小さな命を目の前にして、ひなたは言葉を失いました。ただじっと赤ちゃんを見つめ、その存在を心に刻み込むように。

産まれて約一週間の小さな命…
施設には他にも、親を持たない幼い子どもたちがいました。彼らの姿を目の当たりにしながら、ひなたはぽつりと日本語で呟きました。「赤ちゃんは捨てたらあかん。自分勝手すぎる…」

お昼寝してる赤ちゃんをそっと見つめるひなた…
当たり前にいつも、一緒の家族…
小さな胸に、親に捨てられた子どもたちの気持ちを思いやる気持ち、そして彼らを置き去りにする大人たちへの複雑な感情が込み上げていたのでしょう。

帰り道、バイクの後ろでひなたは、「赤ちゃんを捨てる時、悲しくないのかな?」「発見が遅かったら赤ちゃんは死んでしまうのか?」と複雑ないがこみ上げるひなた。

一緒にランチを食べる時も、複雑な思いは続いていました。
「夏休みに日本に帰るから、使わなくなるおもちゃを持ってきて、一緒に届けよう。」悔しさ、悲しさ...
でも何より、誰かのために行動しようとする、優しさ。その日、ひなたが見せた姿は、周りの大人たちの心にも深く響きました。
施設長に今日のこの日を忘れないで!と言われたひなた。この貴重は体験は忘れないでしょう…

”たすけびと”では、ただの語学正規留学サポートにとどまらず、フィリピンの貧困問題や社会課題と向き合う機会を大切にしています。
現地でのボランティア活動を通じて、日本ではなかなか触れることのできないリアルな現状を肌で感じる
それは、言葉だけではなく「心」で学ぶ貴重な体験です。
子どもたちと触れ合いながら、彼らの笑顔に勇気をもらい、時には抱えきれないほどの現実に胸を痛める。それでも「何かできることはないか」と考え、行動する。その一歩が、他者への思いやりや行動力を育みます。
”たすけびと”は、留学を通して語学だけでなく、人として大切な「誰かを思う優しさ」を学べる環境を提供しています。 私たちはこれからも、学びと心の成長を支える活動を続けていきます。